本日も感想文

読んだこと、観たこと、聴いたことの覚え書き

ユリゴコロ (2017年)

少し前ですが、何かの映画を観に行ったときに流れていた予告で興味を引かれました。
「あなたの優しさには容赦がありませんでした」
「人殺しの私を、愛してくれる人がいた」
吉高由里子ちゃんが出ている作品で、最も好きなものは「花子とアン」。ここ最近で一番好きだった(ひよっこに僅差で抜かれましたが)朝ドラなので、それとのギャップを感じましたが、殺人犯役はきっと彼女に似合うんだろうなあ、と直感で思いました。ちなみに原作は沼田まほかるさん。原作を読んでから観に行きました。

 

ざっくりなあらすじ

カフェを営む亮介(松坂桃李)。男手ひとつで育ててくれた父親が余命わずかと診断され、結婚を控えていた千絵(清野菜名)が姿を消してしまう。そんな状況の中、実家の押し入れで一冊の「ユリゴコロ」と書かれたノートを見つける。そこに書かれていたのは、美紗子と名乗る女(吉高由里子)の手記。人を殺めることでしか自分の生きる世界と繋がることができない女性の衝撃的な告白だった。
そんな美紗子もやがて洋介(松山ケンイチ)と運命的な出会いをし、「愛」というこれまで知る由もなかった感情に触れることとなる。しかしそれはさらなる悲劇の幕開けにすぎなかった。
自らの失意の中、美紗子の人生の奥深くに触れていくにつれ、次第にその物語が創作だとは思えなくなる亮介。いったい誰が、何のためにこれを書いたのか。なぜ自分はこれほどまでにこの手記に惹かれるのか。そして機を待っていたかのように、千絵のかつての同僚だったという細谷(木村多江)が、千絵からの伝言を手に亮介の前に現れた……。

 


超個人的感想

めちゃくちゃ好きです。原作の小説とは、思いっきり設定が変わっていましたが、映画は別物として観たら、もう本当に素晴らしい映画でした。

まず、吉高由里子ちゃんがすごかったです。浮世離れした、何を考えているのか普通の人には到底理解できない、人を殺さずにいられないという殺人鬼にしか見えませんでした。だからと言ってなりたくて殺人鬼になったんじゃない。自分でもその理由が分からない。彼女の表情を見ていると、楽しいとか苦しいとか、悲しいさえ分からない感情のない人形にしか見えないんです。感情が欠落した真性の危ない人という表現がぴったりでした。

それが「あなた」に出会ってゆっくり変わっていくんですね。何もうつしてないガラスみたいだった黒い瞳が、ゆらゆら揺れながら焦点を少しずつ合わせていく感じでした。子供の頃からずっとおぼつかない感じだったのは、人間離れしていたから。でも今まで知らなかった感情を知り、人の心を自分のものとして理解していくたびに、違う意味で危うくなっていくんです。感情を知る前までは、ひとりでも何があっても平気だったのに、だんだん失くしたくないものが増えていって、「人間」になっていく。その葛藤や戸惑いの表現が、吉高由里子ちゃんは抜群でした。

主人公が子供の頃に持っていた人形や、くっつき虫(子供の頃よく見た、トゲトゲの服につくと取れない植物のことです)の使い方も本当に印象的で、小説にはない映像だからこそできる演出もとてもよかったです。ただグロテスクです。R−12指定は何故?と思ったら、結構なグロ具合でした。主人公が人殺しなので当たり前なんですけど、結構描写はビリビリくるグロさです。自分が血を流しているわけでもないのに、すごくリアルで痛さを感じたぐらいです。

 だけど、痛くてもグロくても、原作と違っても、全部ひっくるめてこの映画が好きです。「あなたの優しさは容赦ない」だけでなく「あなたの愛情も容赦ない」んですね。松山ケンイチさん演じる「あなた」が、吉高由里子ちゃんに負けず劣らずいいんです。たくさんの人を殺したとか、普通の人と感覚が違うとか、自分のトラウマの原因になった人だとか、それを知って苦しむのになお、主人公を愛してくれるんです。深く、強く。その愛情は、原作よりも映画の方が深く感じられました。もう泣けるぐらい。こんな風に愛してくれる人がいたら、殺人鬼だって変われるんですね。この二人がどうか幸せになりますように、とみている最中ずっと祈るぐらい素敵な二人でした。

 

松山ケンイチという容赦のない愛

彼は途中から登場します。優しさに溢れた、ちょっと脆い感じの役なんですが、これがもう本当に素晴らしいのです!!!松山ケンイチしか「あなた」はできないんです!本当に!姿カタチももちろんですが、少しボソボソ気味の声もこの役にぴったりでした。悩んでいた青年時代から、子供を育てることで明るく幸せになっていって、だけど恐ろしい事実を知って悩み、それでも最後には主人公を愛して許す人。容赦のない愛、という言葉がぴったりでした。

普通に自分の側にいたら、確かに欠陥だらけの人かも知れないですが、足りない部分があるからこそ、愛が深い。そしてそれが胸に響くんです。こういう役をやらせたら、日本一じゃないかと思います。「あなた」が松山ケンイチさんでよかったです。

そして、指が!本当に指が美しい!伏し目がちにすると、長い睫毛が頬に影を多としたり、真っ黒な瞳でまっすぐ見る目線にもやられっぱなしでした。どうしてあんなに色気のある人なんでしょう。松山ケンイチさんを見るだけでも、この映画は価値があると思います。

 

個人的満足度★★★★★

とてもよかったです。原作と違う部分が多々あって、「何故設定変えた?」とか「一気に詰め込みすぎじゃない?」とか思うところもありましたが、そんなものをすっ飛ばすぐらい、吉高由里子ちゃんと松山ケンイチさんが素晴らしかったんです。松坂桃李くんもよかったですが、やはり二人の関係性と愛情が本当に最高でした。

終わった後の余韻もよかったです。何度も何度も二人の姿が浮かんできて、胸の奥を掴まれるみたいな気持ちになるぐらいでした。この二人が出会えてよかったな、この先幸せになれる未来がありますように。と何度も思いました。時々、引っ張り出して、泣きながら観たい映画のひとつになりました。

 

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