本日も感想文

読んだこと、観たこと、聴いたことの覚え書き

おらおらでひとりいぐも  若竹千佐子

芥川賞受賞作品なので、買ってみました。今回は二作だったので、文藝春秋で。しかしこれが私は失敗だったかもしれません。

 

ざっくりなあらすじ

74歳、ひとり暮らしの桃子さん。おらの今は、こわいものなし。結婚を3日後に控えた24歳の秋、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように、故郷を飛び出した桃子さん。身ひとつで上野駅に降り立ってから50年――住み込みのアルバイト、周造との出会いと結婚、二児の誕生と成長、そして夫の死。「この先一人でどやって暮らす。こまったぁどうすんべぇ」40年来住み慣れた都市近郊の新興住宅で、ひとり茶をすすり、ねずみの音に耳をすませるうちに、桃子さんの内から外から、声がジャズのセッションのように湧きあがる。捨てた故郷、疎遠になった息子と娘、そして亡き夫への愛。震えるような悲しみの果てに、桃子さんが辿り着いたものとは――

青春小説の対極、玄冬小説の誕生。新たな老いの境地を描いた感動作。第54回文藝賞受賞作。主婦から小説家へーー63歳、史上最年長受賞。

 

個人的感想

二段組の文藝春秋で読むんじゃなかった、と読み始めてすぐに思いました。東北弁。文字を追っているのですが、全然頭に入って来なかったんです。二段組構成なので、一ページ文字がびっしりの中に、方言がつながっていて困惑しました。桃子さんの気持ちを、最も表しているのは恐らく東北弁の部分なのだろうと思ったんですが、それが全然分からない。濁点が普通に多いだけでなく、桃子さん独特の繰り返しのリズムがとにかく分からない。どこで区切ったら知っている言葉になるのか分からない。そういえば昔、東北に旅行に行ったときに、言葉がよく分からず、同じ日本なのにこんなに違うのかと衝撃を受けたことを思い出しました。で、一旦読むのをやめて、ちょっと放置しておきました。こういう時は読まないに限る。しばらく放置したのちに、もう一度読んでみたのですが、やっぱり方言が分からない。だったらもう方言は読み流そう、と思って頭に入ってくる部分だけを読み始めたら理解できるようになりました。だけど途中で入ってくる東北弁にまた飛ばす、の繰り返しでした。

でも、桃子さんが感じる世界、風景の描写、あちこちから聞こえて来る声の部分はとても鮮やかで、ユーモアもあり、桃子さんがかわいく感じました。74歳でずっと人のために生きてきた人生が、夫の死や子供が離れていくことによって変化していく。寂しさや悲しさと同時に、どこかで一人でいることに喜びを覚える。愛する人と出会い共に暮らしていくのも幸せだけど、全て何もかも一人で自分のためだけに生きていくのも幸せ。私は桃子さんのように何十年も主婦をして来た訳ではないですが、いつかこういう時が来るんだろうなと思います。もちろん主婦だけでなくて、家族を守るために一生懸命働いている夫や妻という立場の人でもみんな同じことを感じるのではないでしょうか。

だけど、やっぱり寂しいですよね。桃子さんが「心底惚れた旦那さん」を思う気持ち。最後の方に桃子さんが流した涙にぎゅっとなりました。好きな人を失うのは、辛いし悲しい。それは若くても老いても同じ。70代80代の自分は、今よりずっと成熟した自分なんだろうと想像しますが、もしかしたらあまり今と変わらない感覚なのかもしれないですね。「老い」というと、ネガティブなイメージが多いですが、桃子さんのかわいらしさや、柔毛突起会議が自分にも起こるのかと思ったら、ちょっと楽しみな気もします。

ただ、やっぱり途中で出てくる東北弁にかなり苦戦したので、これが自分の土地の方言だったらもっと共感できたのかもと思います。

 

個人的満足度★★★☆☆

桃子さんはかわいかったですし、老いも悪くないなーと思えたので、内容はおもしろかったのですが、何しろ東北弁が大変でした。情景描写の時には普通に書いてあるので読めるのですが、その途中に桃子さんの頭の中の会議が始まったり、感情が入ってきたりすると東北弁が出てきて、その度にちょっとフリーズしてしまうので、読むのが大変でした。なんとか最後まで読みましたが、もう一度読むかと言われると躊躇してしまうので、星3つで。方言って独特で表現方法としては素晴らしいんでしょうけど、馴染みがなさすぎると理解するのに時間がかかるものなんですよね。私が東北出身だったら、もっと入ってきたんだろうなあと思います。