本日も感想文

読んだこと、観たこと、聴いたことの覚え書き

羊と鋼の森 (2018)

本屋大賞をとったこの映画の原作。ずっと前に読んで、なんて健やかで優しい物語なんだろうと思っていました。高校生だった主人公が、調律に出会い、仕事を通して成長していく物語。静かでゆるやかな展開だけど、芯があって、力強くて、誰もが優しい。とても好きな本なので、映画になると聞いて楽しみにしていました。

 

ざっくりとしたあらすじ

将来の夢もなく生きていた外村は、高校でピアノ調律師の板鳥と出会い、板鳥の調律したピアノの音色に魅せられ、その日から自身も調律の世界を目指すことを決意。専門学校を出て新米調律師として働くようになった外村は、調律師の先輩・柳やピアニストの高校生姉妹・和音と由仁ら、調律を通して知り合う人々とのかかわりによって、調律師として、そしてひとりの人間として成長していく。

 

 

個人的な感想(ほんのりネタバレ)

映像と音楽が美しく、特に森とピアノがこんなにも輝くものなのだと、この映画を見て知りました。子供の頃、10年ほどピアノを習っていましたが、とにかく練習が嫌いで、教室のある日だけちょっと練習して、ほぼ初見で先生の前で弾く。という、ピアノを習っている生徒にあるまじき行動をしていた私にとっては、驚きの連続。毎日ピアノの練習をしたり、ピアノで人生が明るくなったりというエピソードを見て、なんだか家のピアノに申し訳ない気持ちになるほどでした。

ピアノの調律シーンについては、本でも読んでいたので、少しイメージはできていました。しかし、もともと知識のない私。調律を映像で見て初めて知ることが多く、とても繊細で微妙な調整を必要とするものなのだと、改めて思いました。主人公が自分の道を決めるきっかけになる調律師が三浦友和さんなのですが、世界的なピアニストからもご指名が入るほどの腕を持つというのがとても似合っていました。こういう人の技術を目の当たりにしたら、確かに自分の人生が変わるかもしれない。冒頭の場面は本当に美しく、神秘的でした。

そして、主役の山崎賢人さん。森で育ち、ピアノの調律に魅せられる青年。その道を目指し、悩み苦しみながら、成長していく外村くんそのものだったと思います。キラキラした大きな瞳で、先輩たちの言うことを一生懸命メモを取ったり、うまくいかない時には焦って苦しんで汗だくになったり、緑の多いしげる森に足を踏み入れて光を目指したり。どの場面でも地道で派手さはないのに、みずみずしく、まっすぐ一直線に、必死に調律を極めようとする青年の美しさ。彼の真面目さや一生懸命さは、他の登場人物に理解されているだけでなく、見ている私にもまっすぐに伝わってきました。「こつこつ。こつこつです」。三浦友和さんのセリフを体現すると、こうなるんだなあ、と。

つい最近、「トドメの接吻」というドラマを見ていたので(初回をなんとなく見ていたら、すごく面白くて最後まで見てしまったドラマです)、そのホスト役とのギャップに最初びっくりしましたが、映画の中では外村くんそのもので、とてもつい先日までホストだった人とは思えない。山崎賢人さんって、漫画の実写とかによく出ている人なので、アイドル的な俳優さんなのかなあ、と思っていたのですが、違うんですね。作品によって全く別人になれる。本当に今まで知らずに申し訳なかったです。

 

あとはピアノ。本当に美しかった。クラシックは普段全く聴かないのですが、この映画のサントラやピアノコレクションは欲しいと思いました。クラシックを聴かず嫌いだったのかもしれないなあ。そして、ピアノを10年ぐらい触っていたのに、この美しさに気がついていなかったって、昔の自分ってもったいないなあとも。

それからもうひとつ。外村くんの先輩役を鈴木亮平さんがやっているのですが、彼がドラムを叩いているバンドのライブを外村くんが観に行くシーン。まさかのエルレが流れて「あ!」と思わず声が出てしまいました。不意打ち。本当にびっくりした。最後のエンドロールにも「細美武士」とあって、違うところでも感動。クラシックだけでなく、ロックも取り入れてくれた演出が嬉しかったです。

 

 

個人的満足度★★★★★

すごく好きな映画になりました。映像も音楽も出演者もすべて美しい。森の緑が目に優しく、ピアノの音が耳に優しく、物語が心に優しい。美しくて優しい映画でした。

その分、派手な演出はないですし、何か大きな事件があるわけではないので、観る人によっては動きがなくて眠たくなってしまうかも。だけど私はどのシーンもステキで、何度も観たくなる映画だと思いました。

音楽が好きな人はもちろん、これからどういう道に進もうか悩んでいる若い人にも、とてもいい映画だと思います。だけどこれ、観る年代によって感じることは違う映画なんだろうなあと思います。だから、人生の節目節目に見ると、感慨深いかも。またDVDになったらみたいと思いますし、自分が今後、何か悩んだ時にも見てみたいなあ、と思います。

まずは、サントラとピアノコレクションを。20年ぶりぐらいに、ピアノを始めてみるのもいいかもしれないなあと思います。その前に実家のピアノ調律しなくちゃ。我が家のピアノが最後に調律されたのはいつか。映画の中で見た調律の記録が出てきたら、ちょっと切なくなりそうです。

 

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